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  • 日本基督教団 仙台東教会

2019年6月2日№125-22アケルダマつまり血の土地とはどこなのか」 使徒1章12節~26節 (P.213~214)

「○○牧師は説教にいのちをかけていなかったのですか?」。ある牧師の研修会で、既に故人となられた先輩を、その人自身も相当に年輩であったにもかかわらず、揶揄したその言葉に心が衝撃を受けて、そのまま忘れることができない。

 「何々に命をかける」 というのは、「命を捨てる覚悟で物事に立ち向かう」というくらいの意味だが、説教に命をかけるという場合、はたして「命を捨てる覚悟」で立ち向かうというのは、具体的にはどういう状況を指すのであるか。 

 そう言う状況とはほど遠いとしか見えないくだんの年輩牧師の乱暴な問いには、ただ悲しみ嗤うしかなかった。命の危険が差し迫っているならばともかく、安閑とした状況のなかで、あのような「深刻な問い」は語る者の俗物性を露わにするからだ。

主イエスは、そのことばを語られるどの瞬間にも、そのことばによって生命を回復し、あるいは新たに生みだす出来事が生起していたが、同時に、ある他の人びとには同じことばによって殺意、敵意、憎悪が生み出されるという事態が生起していた。この相反する感情の緊張・葛藤のあいだでは、主イエスの語りには、常に「死」の陰がつきまとっていた。その葛藤、感情の揺れ、歪みは、12人の弟子の間にも生じていたに違いない。第一の弟子でさえ、ゲッセマネの園では暴力を克服出来てはいないかった。ユダに対する弟子たちの信頼は厚かったであろうことは、金銭に対する潔癖な性格を見込まれていたからこそ共同体の会計役を任されていたのであるから、容易に推認できる。篤実な人物だったとみるべき。その彼が、あの晩餐の時には、「裏切り」を決心していた。

 この「裏切り」を、わたしたちは、自分とは関係のないものとして忌むべきものと、ただみなしておいてよいのだろうか。他の11人にしても、常に主イエスへのまったき信頼にのみ生きていたのか。彼らに揺れはなかったのか。少なくとも、彼らが聖霊を受ける前には、彼らの誰もが、「命を捨てる覚悟」は完全な意味ではなかった。口先では「あなたのためになら死ねます」と、平気で言っていたペトロも主イエスを三度否んだ。

 ペトロとユダのあいだで、人格的な「偉大さ、卑小さ」の比較は無意味だろう。

 誰しもが、ペトロとユダと同様の揺れ、歪み、葛藤はある。その振幅がいかに大きかろうと、小さかろうと、彼らを選びたもうた神の意志は撤回され得ない。神はペトロを選び、ユダをも選びたもうた。この選びに不完全さはあり得ない。ユダは、「裏切り」の後、死んだ。地上での役割も評価も悲惨極まりない。しかし、彼を選んだのは主イエスなのだ。「人の子は、殺され、三日目によみがえることになっている」。事が成就するためにこそ、彼はすでに選ばれていた。主イエスのユダへの愛を行間から読み取りたい。

 


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